学校法人 神戸女学院 Kobe College Foundation

院長室
Office of the Chancellor

院長メッセージ

学校法人神戸女学院 理事長・院長 飯 謙

「愛神愛隣」

神戸女学院は1875(明治8)年10月12日、米国会衆派教会の海外伝道団体(アメリカンボード)から派遣された二人の女性宣教師、イライザ・タルカットとジュリア・ダッドレーによって、西日本最初の女性のための教育機関として創立されました。以来140年余にわたり、「愛神愛隣」の永久標語のもと、良質な伝統、美しいキャンパス、そして豊かな教育理念と内容をもって、高い評価を受けてまいりました。

1873年春に来日したタルカットは米国に送った最初の手紙に、神戸の若い女性たちと「早く話せるようになりたい」と綴りました。この「話す」には、たいへん深い相互理解への志しが込められています。神戸女学院は、キリスト教的な、赦し合い、受け入れ合い、仕え合う思いを大切にしてきました。良質な伝統の基礎にはこの精神があります。

この伝統は1933年に完成した現在のキャンパスで、いっそう意味深いものとされました。キャンパスの設計者は近年注目を集めるウィリアム・メレル・ヴォーリズです。ヴォーリズは日頃から「学舎が教育する」と語っていました。西欧の言語で「教育」にあたる単語は、(能力を)「引き出す」あるいは「組み立てる」ことを意味します。ヴォーリズは一方で瓦や手すりのデザインに至るまで細かく指示しましたが、他方、廊下や教室に「あそび」の部分を用意し、生徒・学生ら、生活者の参与を引き出そうとしました。このキャンパスは、受け身ではない、自発的な学びを組み立てるよう働きかけてくれます。

この学びは、創立以来のキリスト教主義に基づく教育理念――相互理解を目指す「国際主義」、個々人の出会いを大切にする「少人数制」、解放された人のあり方を示す「女性教育」、自ら研究・学修の目標を立てる「リベラルアーツ」――とあいまって、豊かな人間性をはぐくんできました。もちろん、その理念を具体化する努力は常に進行形です。最先端の研究と質の高いカリキュラム、たえず見直しと更新を続ける語学学修と海外交流のプログラム、生徒・学生・教職員がひとりの人としてそれぞれに向かい合える規模の維持と制度の検討、そしてヴォーリズによる空間の魅力をさらに活かすこと。多くの人がこの学舎で自らを深め、広く世界へと飛び立っています。

現代は、効率を求めるあまり、人を専門知識や技術のつまった道具と見なすことが珍しくありません。本当に残念ですが、わたしたちもそれに疑問も懐かず、気がつかないままに、人間としての成熟を、物的なもの、計量できるものにすり替えてしまうことがあります。神戸女学院は、キリスト教の伝統に立ってそのような流れに抗い、人間の望ましい原像を追い、示し続けてきました。まためぐみ会(同窓会)の皆様と協力し、卒業後もその思いが生かされるよう力を尽くしています。これからも変わることなく、生徒・学生・卒業生・教職員とともにこのメッセージを発信し、体現してまいります。

学校法人神戸女学院 理事長・院長 飯 謙

飯 謙 略歴

1955年生。明治学院高校から明治学院大学社会学部を卒業後、神学を志し、同志社大学神学部、同大学院博士前・後期課程およびスイス・バーゼル大学に学ぶ。1983年、神戸女学院大学文学部助手に就任。専任講師、助教授を経て、1995年、教授。チャプレン、学生部長、学校法人評議員、理事等を歴任。2009-2015年、学長。専攻はキリスト教学、聖書学。博士(神学)。その他、神戸女学院では史料室専門委員を兼務し、学院史の研究に参加。

著訳書

  • 『旧約詩編の文献学的研究』(新教出版社、2006)
  • 『教養教育は進化する』(冬弓舎、共著、2005)
  • 『聖書 語りの風景』(キリスト新聞社、共著、2006)
  • 『新版 総説旧約聖書』(日本基督教団出版局、共著、2007)
  • 『旧約聖書を学ぶ人のために』(世界思想社、共著、2012)
  • 『山本通時代の神戸女学院』(日本基督教団出版局、共著、2015)
  • 『神戸女学院の宣教師』(神戸女学院、共著、2017)
  • G.M.タッカー『旧約聖書と様式史』(訳、教文館、1988)
  • J.G.ジャンセン『ヨブ記』(訳、日本基督教団出版局、1989)
  • J.F.D.クリーチ『詩編』(訳・日本基督教団出版局、2011)

ページの先頭へ