コラム

2024.08.06 同性愛者は犯罪者?(文学部 教授 金田 知子)

 2023年3月、アフリカ東部ウガンダ出身の同性愛者の女性(30代)が日本で難民認定を受けました。同性愛者であるため、帰国すると迫害される恐れがある、というのが彼女の難民認定の理由です。同性愛行為を刑事罰の対象にしている国は、アフリカや中東を中心に70カ国近くあると言われていますが、そのなかでもウガンダは世界で最も厳格な「反同性愛法」が施行されている国のひとつです。同法では、「同性愛行為への関与」に終身刑を科すほか、同性愛行為を繰り返した場合には極刑(死刑)さえ適用される可能性があります。その他、LGBTQの権利活動や組織、メディア活動を支援または資金援助する個人や団体までもが起訴され、場合によっては禁固刑を科される可能性さえあるのです。前述した女性は、母国ウガンダで同性愛者という理由で逮捕され、警察署で暴行を受けたと証言しています。彼女の家族も迫害の対象となり、彼女自身がウガンダに居続けることはできなかったというのです。
 多様性を尊重する国際的潮流のなかで、欧米諸国からの非難を浴びつつも、なぜウガンダは強固な「反同性愛」姿勢を貫くのでしょうか。
 ひとつには、イギリスが植民地時代にウガンダのような英領植民地に対して生殖目的以外のすべての性行為を「自然に反する行為」として禁じており、そのことが今日の「反同性愛」傾向に繋がっている、という指摘があります(稲葉 2014)。また、「反同性愛」を支持している主なグループが保守的なムスリムやクリスチャンであることから、同性愛を逸脱行為とみなす宗教的な思想もまた少なからず影響していると考えられています。そうした背景は単純ではなく、そこには歴史的、政治的、文化的な諸要因が複雑に影響し合っているのでしょう。
 しかし、いまこの瞬間も世界には、同性愛者であるということだけで犯罪者として監禁されたり、暴行を受けたり、あるいは殺されたりする人がいるという現実、私たちはそこから目を背けるべきではないと思います。

  稲場雅紀(2014):「「魂のジェノサイド」――ウガンダ「反同性愛法案」とその起源」(https://synodos.jp/opinion/international/7191/ 2024.8.5)

執筆者:文学部 総合文化学科 教授 金田 知子

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