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詩人の季村敏夫氏がゲストスピーカーとして来学!
2016年01月13日(水)
1月13日(水)のCDP221(2)「アート・クリティック」(担当:上念省三講師)において、詩人の季村敏夫氏をゲストスピーカーとして招聘し、登壇いただきました。
季村氏は神戸市内で実業家として活躍される一方、詩集『木端微塵』(2004年、書肆山田、山本健吉文学賞)、 詩集『ノミトビヒヨシマルの独言』(2011年、書肆山田、現代詩花椿賞)、 『生者と死者のほとり―阪神大震災・記憶のための試み』(1997年、人文書院、 編著)など多数の著書を執筆しておられます。
講義では、昭和初期の詩人・立原道造(1914-39)の短い生涯と作品について、多くの資料に基づき、鋭い見識と詩人としての深い洞察を加えて、詩というものの魅力、時代背景や人生と作品との関係について、たっぷりとお話しいただきました。立原の生きた1930年代は、日本が第二次世界大戦に向かう時代でした。その時代に、全く時代の暗雲を感じさせず、また当時は死の病であった結核に襲われ余命いくばくもないという自らの不安も全く影を落としていない立原の詩作品を、改めて詳細に読むことができました。1930年代という時代が、今の日本の状況にも重なり、困難な時代における芸術家のあり方についても、考察は及びました。
多くの自治体や団体では、公開講座やセミナーとして、様々なテーマで講演会を開催しています。その上質な一例として、またアートというものの根源にある「詩」(ポエジー)というものを見つめなおすきっかけとして、非常に有意義な講義となりました。
受講生の感想
- 戦争の影が忍び寄ってきている今の日本は、国の強さと誇りを持つための美しさを追求している...そんな時代に立原道造の話をする、ということを聞いたときは、詩に明るくない私は、何が疑問であるかもわからなかったのですが、今回の講義を通して、より立原道造という人物がわかったような気がします。強さからの美しさではなく、はかなさからの美しさを根底に置いている立原道造自身が、つかみどころのない空気のような存在に感じられました。
- 詩人であり建築家でもあったということですが、「人工の美しさ」というのは詩・建築共に通じることで、両者を同じように捉えている人なのかと思いました。詩の中の儚さ、弱々しさの下にあるほの暗さは、経歴に関係するのかとも感じます。詩を読んでいて、「箱庭」という言葉も浮かびました。
- 季村さんのお話が、すごく興味を誘うような話し方だったので、とても面白かったです。詩人の方からこのようなお話を聞く機会などめったにないと思うので、本当によい経験になったなあと思いました。