あらゆる角度から見ないと、「真実」はわからない。074早く映画の世界に飛び込みたくて、高校卒業後は日本映画学校への進学を希望していました。ところが父から「急いで技術を身につけるより、映画で何を発信していくのか学ぶためにも、教養を身につけるべきではないか」と適切すぎる(!)アドバイスをもらって。そのときは、女学院が私の価値観に大きな影響を与えるとはつゆ知らず、ほとんど下調べなしに受験し、入学することになったのです。大学に入ってからは授業がおもしろくって。特に印象深かったのは「アメリカ文化史」。奴隷解放の父・リンカーンが、人道的な目的だけでなく国の経済のために黒人奴隷を解放したこと、差別の対象をなくしたことに晩年になって後悔していたことなどを、社会的背景や手記などを考察して知りました。伝記とは異なるストーリーに、ものごとの多面性を痛感。「360度いろいろな角度から見ないと、真の姿は見えてこない」という新しい価値観はとても大きかったですね。また、女性が重要なポストに就いている女子大ならではの環境にも驚き、「これが普通」と思い込んでいた自分の視野がいかに多面性に欠けていたかを知りました。美しいヴォーリズ建築で過ごした日々は、私の空間演出のベースになっています。「繕い裁つ人」のワンシーンは、図書館本館で撮影を行いました。
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