本物のオペラに触れた2年間が、私を変えた。100女学院を卒業してすぐに、イタリア声楽コンコルソで優勝、ミラノ大賞を受賞して、イタリアに2年間留学する権利を得ることができました。でも実は私、当時大恋愛中でして……声楽家としてのキャリアを積むことよりも、幼い頃から一番の夢だった「家庭を持ち子どもを産んで、美しい歌声で子守唄を歌ってあげたい」思いが強くて。後ろ髪を引かれる思いでイタリアに渡ったのです(笑)。そんな私ですが、実際にスカラ座に通って本物のオペラを聴く日々を過ごすうちに、「もっとこの世界を追求したい」という“欲”と舞台に立つ“喜び”が心の中で大きく膨らんで。思いの変化に比例するように、国際コンクールでも高い評価をいただくことが続きました。思えば、女学院で外国人の先生と日常的に接しながらいろいろな視点で世界を見ていたことが、海外でも臆することなく自然体で舞台に立てる強さにつながったんでしょうね。帰国後もさまざまな舞台に立たせてもらいました。さらには遠距離恋愛を乗り越え、結婚もしました。2人の子に恵まれ、これで夢だった子守唄を歌う暮らしが訪れると思いきさいとう ことこ1977年、音楽学部 音楽学科 声楽専攻を卒業後、ミラノベルディ音楽院に留学。数々の国際コンクールに上位入賞し、帰国後も多くの舞台に立つ。1981年に神戸女学院大学の非常勤講師、1988年には専任講師に。1993年には南カリフォルニア大学に客員研究員として留学。2015年より学長を務める。
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